近年注目されている「終活」。「人生の終わりを考えるなんて、まだまだ早い」と思う方もいらっしゃるかもしれません。しかし、終活に「早すぎ」はなくむしろ「早く始めるべき」との意見もあります。
この記事では調査をもとに、いつから終活を始めている方が多いのか、準備や手順、今すぐとりかかれることなどを解説しています。
「まだ早い」と思う方も、老後の生活も含めた「終活」への理解を深め、前向きにのぞんでみませんか。
終活とは?言葉の意味と込められる想い
「終活」について「自分の最期を考えるなんて縁起が悪い」と感じる方も多いでしょう。しかし終活で準備するのは、葬儀や相続など亡くなったときのことばかりではありません。
ここでは、終活にはどんな活動が含まれるのかを理解しておきましょう。
「終活」は老後を含む人生の終わりを考えた準備のこと
終活とは「老後を含めた人生の終わりに向けておこなう活動」を指します。具体的には身の回りの品を少しずつ整理したり、医療や介護、また葬儀の希望をまとめておいたりするものです。2009年頃より言葉が広まり、実際に終活をおこなう方も増え始めました。
終活には前向きな面も大きい
人生の最期に向けての準備というと、暗く寂しいものを想像してしまいがちです。
しかし「終活」とは自分の人生を振り返り、友人や知人・お世話になった人たちとの思い出に向き合うなど「人生の棚卸しをしてこれからを考える」という前向きな面が大きいもの。
どう生きてどう最期をむかえるかを具体的にイメージすることは、老後の生活をより豊かにすることにもつながりますので、いつから取り組んでもよいでしょう。
終活はいつからスタートするべきか 年代、タイミングを調査
終活は、いつから始めたらよいのでしょう。アンケート調査の結果を参照しながら、終活を始めるタイミングをご紹介します。
終活いつから始める?調査によれば60歳代から始める人が多数
楽天インサイト株式会社がおこなった「終活に関する調査」によれば、終活の意向がある人に「終活を始めたい年齢」を聞いたところ「60代」が4割で最も多いという結果でした。次いで「70代(23.6%)」「50代(12.4%)」と続きます。
この年代層が終活を始めたいと考える背景には、定年を過ぎて自分たちの老後・死後を考える時間の余裕ができたこと。また、体力が落ちてくる今後のことを見越して、身体が動く60代のうちに終活を始めておこうと考える方が多いのではないかとみられています。
参照:楽天インサイト株式会社『「終活」をする意向が最も高いのは30代。実際に始めたい年齢は「60代」がトップ』終活に関する調査(https://insight.rakuten.co.jp/report/20190527/)
終活に「早すぎ」はありません いつからと思ったときが始めどき
60代から始める方が多い「終活」ですが、より早くスタートしてもかまいません。 財産の運用や、セカンドライフの場となるかもしれない老人ホームについて、年を重ねてからですと、どうしても「必要に駆られ急いで決める」になりがちです。
早くから少しずつすすめていけば、ゆっくり調べてプランを考えられるもの。若いうちの方がより身体が動き、調べごとや手続きなどのアクションをする気力もあります。 年齢にとらわれず、40代50代から「終活」をすすめていきましょう。
人生のさまざまな節目も終活を始めるきっかけに
年齢を重ねたからそろそろ、と終活をスタートするほかにも、終活を考え始めるタイミングはさまざま。
下記のような人生の「節目」をむかえたことで、老後を含む人生の終わりを考え始めたという方も多いです。
- 身近な人が亡くなった
- 親に介護が必要になった
- 自身や子どもの結婚、出産など
とくに親の最期を見送る経験をした人は、残された人の苦労が具体的にわかることもあります。
その経験を活かして、自分亡き後に家族が苦労しないように終活をすすめてもよいかもしれません。
親の終活と同時進行もよいでしょう
親が存命かつまだ終活をしていない場合、自分が終活をすすめる中で、親も誘って親子で一緒に終活をすすめていくのもおすすめです。
「終活」は高齢の方と話すには、話題にしづらいデリケートなものです。しかし、子どもが終活をしていると知れば、親世代の方も「まだまだ元気なうちからするものなのだな」と終活を前向きに感じてくれることもあるでしょう。
コミュニケーションをとりながら一緒に作業をするうちに、今までに聞いたことがない親の人生の話を聞くことができたり、親子の絆が深まったりすることもあります。
年代別終活のポイント
終活はいつからでも始められますが、年代により「何をするか」の優先順位は変わります。ポイントをおさえて終活をすすめていきましょう。
【40代】終活で自分の人生を振り返りながら整理を
日本人の平均年齢である80代まで生きるとすると、40代は人生の折り返し地点。子育てがひと段落していたり、知人などから親の介護の話を聞いたりする時期なので、自身の今後を考える機会も出てきます。
これまでの人生をふりかえりながら少しずつ私物や財産を整理していくとよいでしょう。まだこれから生活に大きな変化がある可能性もある世代ですから、墓地の購入など多額の費用がかかるような終活は避けましょう。
【50代】体力気力判断力が満ちている間にセカンドライフや相続のプランを立てて
50代になると両親の介護や死に直面する方も多くなってきます。また自身の経験や身近な人の話から、40代の頃よりもより具体的に老後をイメージできるようになっているでしょう。
気力、体力が充分あるので、アクティブに老人ホームや介護施設の見学に行き、老後の計画を立てたり、資産や身の回りの品の整理・片づけをおこなったりして、老後も快適にすごせるよう住まいの動線を整えましょう。
【60代以降の終活】終の棲家や介護について具体的に考える
60代の終活では、自分に介護が必要になった場合のことについて具体的に考えます。今は元気でも、数年後~10年後には介護が必要になるかもしれません。
家庭で介護を受けたいのか、施設に入居したいか。施設希望ならどこがよいかなど、資料を集めたり見学したりして、明確にしておくとよいでしょう。
また、子どもの独立など家族構成や生活に変化があった場合、使わなくなった銀行口座が出てきているはず。口座をまとめる、解約するなどしておきましょう。
土地を持っている場合は、相続のことを考えて必要な整理をすることが大事です。
葬儀、お墓のことなども、身近な家族と相談しながら、具体的に考えていきましょう。
終活でおこなう5つの活動、すすめ方
終活では具体的にどのようなことをやる必要があるのか、全体像を把握しておきましょう。ここからは、終活でおこなう主な内容を解説します。
連絡リストの作成
まず真っ先にとりかかりたいのが、連絡リストの作成です。連絡リストがあれば、亡くなったときに連絡をする以外に、入院時など緊急連絡の際にも使えます。
近しい人の連絡先がスマホやパソコンの中にまとめてある場合には、印刷して家族に渡しておく、エンディングノート等に書き写しておくなどしましょう。
連絡リストは親類・友人・会社関係などカテゴリー分けし、記しておくと便利です。
下記のような項目が分かるようにしておくと、連絡をとる人の負担を減らすことができます。
・氏名
・住所
・連絡先
・自分にとってどんな間柄の人なのか
・亡くなったときにすぐ連絡する必要があるか、葬儀に呼んでほしいか、可能なら生前に会っておきたか、埋葬後におしらせしてほしいのか
財産の整理
クレジットカード類を整理
使っていないクレジットカードはありませんか?カードの契約者本人が亡くなった場合などに、家族など本人以外がクレジットカードを解約する手続きは複雑になります。
契約者本人がカードを解約するのは比較的簡単ですから、必要なクレジットカード以外は解約し、枚数を減らしておきましょう。
有価証券の整理
株式や為替、先物取引、著作権などは、持ち主が亡くなった場合、名義変更などの手続きが必要になります。
リストを作成するなど、相続がスムーズになるように準備をしましょう。運用報告書があればまとめておきましょう。
身の回りの品物の整理
生前整理
亡くなった後、残された家族に負担をかけないよう、不用品を処分するなど持ち物を整理しておくことを生前整理とよびます。
特に美術品、ブランド品などは、残された人に価値がわからなかったり、遺族間で揉める元となったりする可能性も考えて、整理したりリストを残すなどしましょう。
インターネット上の契約もリスト化する
動画配信サービス等、サブスクリプションサービスのアカウント情報などもリスト化しておきましょう。亡くなった後に遺族がアカウントにログインできず、月会費が引き落とされ続けてしまうケースがあります。
医療、介護の希望を明確にしておく
介護が必要になったとき、誰に、どこで介護をしてほしいのか希望を明確にしておきます。
子どもに介護を頼み、家で過ごしたいのなら、あらかじめ子どもに打診する。介護施設に入居したいなら、施設を探しておくなどの必要な準備をしておきましょう。
また、自分が危篤状態となった際にどうしてほしいのかも、事前に決めておきましょう。
「延命のためだけの措置は希望しないが、苦痛の緩和ケアは希望する」「自宅で最期をむかえたい」など具体的に医療方針を決めて記録しておけば、いざというときに家族が判断に苦しまなくてすみます。
臓器提供の意思があるかも、保険証の裏などに希望を残しておきましょう。
葬儀、お墓について
葬儀の準備
式場や形式(仏式、神式など)・規模(一般、小規模、家族葬など)の希望があれば、記録しておきましょう。
そのほか、遺影の撮影(または気に入っている写真を選んでおく)、棺に入れてもらいたいものがあれば用意して由来を記しておくなどの準備があります。
葬儀社に相談して見積もりを出してもらい、必要な金額を準備することまでできれば、なおよいでしょう。
お墓の準備
お墓についても、先祖代々のお墓に入りたいのか、夫婦だけや自分ひとりのお墓がよいのかなど自分の気持ちを明確にして、家族に相談してみましょう。
また現在お墓を継承している場合は、後継者や墓じまいについても考えましょう。
いつからでも始めたい、終活での生前整理 思い入れのある物の上手な手放し方
終活のなかでも、一番手間と時間がかかる「生前整理」。 大変な作業ではありますが、持ち物を整理すると気持ちも軽くなりますし、自分が大切にしたいものが明確になるというメリットもあります。
ここでは、上手に物を手放し、生前整理をスムーズにすすめるコツをご紹介します。
自分の思い出の品は自分で処分
思い入れがある品を処分する行為は、なかなか踏み出しづらいものです。しかし本人亡き後、残された者が故人の持ち物を処分することは、本人がおこなう以上に大変な負担となります。
後に残る人のことを考えて、できるだけ「自分の思い出の品は自分で処分する」ことを心がけ、生前整理をすすめていきましょう。
整理整頓はせず物を減らすことに集中
生前整理のコツは「整理はしない」ことです。とにかく、まずは持ち物を減らすことに集中します。スピード感をもって「必要」「不要」「保留」に分類していきましょう。
不用品については「捨てる」「必要な人に譲る」「回収業者に依頼」など、処分先も考えておくとスムーズにすすめることができます。
「保留」とした品は、半年後にもう一度考えてみると、必要か不要か判断しやすくなります。
思い入れが少ない物から、毎日コツコツ続ける
物の処分は、思い入れのある物から始めようとすると、時間がかかる割に成果があがらず、面倒になってしまいがち。
そこで、置いてある物の要不要の判断が付けやすく、また物が減ってスッキリしたところが目につきやすい「玄関」から整理を始めることをおすすめします。
1日の作業は30分など短時間でかまいません。息切れしないようコツコツ続けることが大切です。
趣味の品は「究極の宝物」のみ残して処分
趣味の品のうち、今使っておらず今後も使わないであろう物は処分しましょう。
使わないけれど残したい「思い出の品」は、「一緒に棺に入れてほしい」と思えるほどの物のみ、と考えて。
ただし「大切な人からの特別なプレゼントだったもの」など、手放すと相手との仲がこじれてしまうような物は残してもよいでしょう。
いつから終活?コツをおさえて「今から」とりかかりましょう
終活はネガティブなものではないこと、メリットも多くあることがわかっていただけたと思います。
「すぐにやってみたいけれど、何から手をつけたらよいか迷う」という方のために、今すぐ始められること、また終活をするにあたって注意したいことを解説します。
終活には「エンディングノート」を利用して
終活をスタートしたいけれど、何から始めようか迷っている方には「エンディングノート」を購入し、記入していくことからおすすめします。
エンディングノートとは終活の知識がまとまっており、残された人に必要な情報を、項目ごとに記入できるようになっているもの。
書店や文房具売り場などで購入できます。厚さや内容はさまざまですので、実際に手に取ってみて、書きやすく、記入後も見やすそうなものを選びましょう。
気を付けておきたいのは「エンディングノートは遺言書とは違う」ということです。相続分割について記入したとしても法的な効力はありません。あくまでも「希望」を記録しておくものと覚えておきましょう。
終活はひとりだけでおこなうものではありません
終活をすすめるときに注意したいのは「全てを自分だけでおこなうもの」と思わないことです。
身近な家族とコミュニケーションをとりながら、家族に関係することはきちんと相談しながらすすめましょう。エンディングノートの置き場所などの情報の共有も大切です。
わからないことや解決が難しいことは、司法書士や税理士など専門家に相談したりするのもよいでしょう。ただし終活という言葉を悪用する詐欺や、悪徳業者もありますので注意が必要です。
まとめ
「終活」は自分の人生を振り返り、今後の人生を具体的にイメージする活動です。
いつからでも始められますから、自身の終活に必要なことを整理して、どんどん取り組んでみてください。
前向きな終活は身近な人たちとの絆を深め、今後の生活をより豊かにすることにつながるでしょう。